【7日目(6/20(金))稚内〜旭川】

◆本日のテーマ◆茫漠たる大地に人の世の無常を感じ、新緑の風に吹かれて生命の喜びを知る


<穏やかな北の海を眺めて>
<大地の果てへ続く道>
<激走!トロッコ4号>
<−41℃>


<穏やかな北の海を眺めて>
朝の散歩で宿の前の浜辺をうろうろする。静かで穏やかな海だ。
しかし空模様がはっきりしない。雨は降っていないが、雲が多く、見通しは利かない。
これじゃあ、利尻島や礼文島の姿を見ることはできないかなあ。
天気予報によると、台風くずれの低気圧が津軽海峡付近を進んでいて、函館や札幌では大雨になっているらしい。
今日の宿泊予定地の旭川も雨の予報だ。途中の予定ポイントまでは天気が持つかなあ。心配だ。

ベルクはそんな心配も知らずいつもどおり草むらに顔を突っ込み、匂いチェックに夢中。いい気なもんだ。
宿の横にアルメリアのピンクの花がきれいに咲いていた。似あわないとは思いつつ、ベルクを横に座らせて記念撮影。

なんか呼んだ? でへへ、照れるなあ。
なんか呼んだ? でへへ、照れるなあ。


8:05、宿を出発。稚内のもう一つの岬、野寒布岬へ向かう。
ちょうど通勤時間帯のため、稚内市街に向かうにつれ車も多くなってくる。
稚内市街は、最北の町という感じは無く、よくある一つの地方都市といった感じだ。
まあ、稚内だからといって“最北の”旅情を期待するのは、我々旅行者の勝手な思い込みなのであって、
ここに暮らしている人にとっては、余計なお世話だろう。
でも、なんかなあ。。。。

8:35、野寒布岬に到着。宗谷岬と比べると地味な所である。土産物屋も無いし。
まあ“日本最北”ではないのだからしょうがないが、こうも違うとねえ。
何でも“1番”にならないとだめなんだなあ、と妙なところで納得してしまう。
写真を撮ったりしてしばらくうろうろしていたら、やっと観光バスが1台。なぜかホッとした。

なぜかイルカの記念碑が。 錆び付いた錨が侘びしさをかもし出す
なぜかイルカの記念碑が。 錆び付いた錨が侘びしさをかもし出す。
ベルク、どこ見てるんだよ。


8:42、出発。これからは、ひたすら海沿いを南下することになる。


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<大地の果てへ続く道>
道道254号〜106号を抜海へ向かう。
昨日まではオホーツク海、今日は日本海。同じ北の海なのだが、イメージがずいぶん違う。
オホーツク海は、流氷に代表されるように厳しいイメージがある。日本海は、波は荒いが海の幸が豊富。
まあ、勝手なイメージだけどね。
空は相変わらず曇り空だが、所々薄日が差すようになってきた。良かった。昼間は天気が持つかなあ。

遠くが霞んだ宗谷丘陵と日本海、その荒涼とした風景の中を貫いていく道。ん〜、抱いていたイメージの風景そのままだ。

荒涼とした大地を貫く道
荒涼とした大地を貫く道


しばらく行くと、丘陵地帯が後退していき、広い原野の中を進むようになる。
その中を、ガードレールも電信柱も無い道が、目の届く限り真っ直ぐに伸びている。
どこまでもどこまでも続く道。その先は空と交わり、まるで異次元の世界に向けて突き進んでいるようだ。

どこまでも真っ直ぐな道
どこまでも真っ直ぐな道


晴れていれば右手に利尻島が見えるはずなのだが、生憎の曇り空でやっぱり何も見えない。
残念だなあ

こんな風景の中を30分も走っただろうか、信号機が見えてきた。久しぶりだ。稚咲内である。
小っちゃなレストハウスが一つあるだけの交差点を左折し、サロベツ原生花園へ。
低い丘を一つ越え、サロベツ原野の中を進むとビジターセンターが見えてきた。

ビジターセンター
サロベツ原野の中に
ポツンと建つビジターセンター


9:26、サロベツ原生花園ビジターセンターに到着。ここは、今回ぜひ訪れたかった場所だ。
駐車場に車を止め、遊歩道を行こうとすると“ペット不可”の看板が。
なんでだろうねえ、とぶつぶつ言いながらも、とりあえず入り口で写真を撮ってベルクは車で留守番だ。

向こうはサロベツ原野 ペット不可だって
向こうはサロベツ原野 ペット不可だってさ


こんなことより、まず最初に観光バスのアイドリングを止めさせて欲しいぞ。

遊歩道は1周すると20分程かかるのだが、広大なサロベツ原野の中のほんの一部を回るだけ。
それでも、地平線の彼方まで広がる原野の中を歩くのは気持ちを雄大にさせてくれる。
今日のテーマのように、人の世の無常を感じるなあ。

晴れていれば
晴れていれば看板の向こうに
利尻富士が見えるのだが。。。


サロベツ原生花園の大きな画像はこちら(58KB)

駐車場まで戻り、留守番していたベルクに水を飲ませる。結構暑くなってきた。
雲が多いが蒸し暑いなあ。これも低気圧の影響か。

ここで、次の予定の幌延町のトナカイ観光牧場に念のため電話をしてみる。
「あの〜、これからそちらに行こうかと思うんですが、犬連れ大丈夫ですか?」
「あ〜、犬は遠慮してもらってるんだよねえ」
「はあ、そうですか」
まあ、動物が中心の施設だからしょうがないか、とあきらめる。

10:13、出発、再び海岸沿いの道道106号に戻り、ひたすら南下する。
何も無い原野を突っ走る。対向車もめったに通らない。
遠くの地平線にポツンと対向車が見えても、すれ違うまでにだいぶ時間がかかる。
広いなあ。

ひたすら真っ直ぐな道
ひたすら真っ直ぐな道


大きな画像はこちら(34KB)

しばらく行くと左手に巨大なプロペラが。
なんでこんな所に扇風機があるかというと、広大な牧場の隅々にまで風を送るには、これぐらい巨大な
扇風機が必要なんだ、というようなバカなことはこれっぽっちも思わなかった。
これは風力発電施設だ。

巨大プロペラ
巨大プロペラ


しかし、異様というか、SF的というか。。。ある意味、道北に特徴的な風景なのだろうなあ。

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<激走!トロッコ4号>
原野の中の道も終わりを告げ、天塩町で国道232号に入る。
さらに南下して遠別町で道道119号に左折、内陸部に入り、国道40号へ抜ける。
12:14、美深町を通過。
道道49号に左折しJR宗谷本線の踏切を渡る。この踏切の手前には、なんと、列車時刻表があった。
1日17本かあ。この踏み切りが閉じているところに出会うのは至難の業だなあ。

踏み切りに時刻表
踏み切りに時刻表


12:35、仁宇布のトロッコ王国に到着。
ここは、旧国鉄美幸(びこう)線の廃線跡の線路を活用し、片道5kmの線路を自分で小さなトロッコを
運転して往復できる、というところだ。

また、事前にメールで犬連れでもOKかどうか問い合わせをしたところ、「問題ありません」との返事が
すぐに返ってきて、とても気持ちが良かった。

●美幸線の歴史●
美幸線は、美深町とオホーツク海沿岸の枝幸町とを結ぶ総延長80km余りの地方交通線として計画され、
昭和39年(1964年)10月、美深から20km余り東の仁宇布までが部分開通した。
その後、工事は歌登町を経て枝幸町へと進み、あとは枕木とレールを敷き列車が走るのを待つばかりとなったが、
「日本一の赤字ローカル線」と呼ばれた同線は、折から国会を通過した国鉄再建法により 廃止対象となったのである。
そして、昭和60年(1985年)9月16日、多くの人々に惜しまれながら「さよなら列車」を運行し、
その歴史に幕を閉じた。
なお、当時の仁宇布は60世帯足らずで、美深〜仁宇布間は片道30分、1日4往復の運行であった。

トロッコ王国の案内板 入国審査を受ける駅舎
トロッコ王国の案内板 入国審査を受ける駅舎



我々の乗る「トロッコ4号」
我々の乗る「トロッコ4号」


駅舎で入国料1,000円×2(犬は無料)を払い、乗車券と入国パスポートを受け取る。
そして、外の線路上に用意されたトロッコを前に、運転と転車(方向転換)、無線の簡単な説明を受ける。
後ろに小さなエンジンが付いていて、時速20kmくらいのスピードが出るそうだ。自転車程度の早さかな。
ラビとベルクが前の席、私が後席で運転を担当する。

出発の手続きは決まっている。まず無線で本部(駅舎内にいる人)に連絡するのだ。
「こちら4号車、これから出発します。ドーゾ」「気を付けて行ってきてください。ドーゾ」などと交信してから出発する。
なんか子供の頃の探偵ごっこみたいで面白いが、ほかに人がいたら恥ずかしいだろうなあ。
エンジンを始動し、車止めをはずして、パーキングブレーキ(自動車のハンドブレーキと同じような形)を解除し、
小ちゃなスロットルを開けてそろそろと動き出す。
エンジンが剥き出しのため、音がすごい。前の席と会話するのに大声を出す必要がある。
それに、車輪が鉄製でサスペンションも何も無いため、振動もかなり大きい。
音と振動が怖いのか、ベルクがジタバタして飛び降りようとする。それをラビがガッシと押さえつける。前途多難だ。。。。

さあ、出発だ! ジタバタするベルクと押さえつけるラビ
さあ、出発だ! ジタバタするベルクと押さえつけるラビ


でも、気分は最高だ。天気もまずまずだし。
爽やかな風を受け、開けた牧草地から緑の森のトンネルを進んでゆく。
小川を渡る鉄橋もある。所々に踏み切りもある(遮断機なんていうものは無いけど)。
この同じ線路を、18年前までは本物の列車が走っていたなんて、なんか不思議な感じがする。
気持ちがいいなあ。ふ〜。

緑の森の中を進んでゆく 鉄橋で小川を渡る
緑の森の中を進んでゆく 鉄橋で小川を渡る


緑のトンネルの大きな画像(140KB)

ガタゴトいいながら、約20分で折り返し地点へ。
先ほど説明してくれた係員の方が車で先回りして待っていてくれた。
教えられたとおりに、転車台の上で一度エンジンを止めて、パーキングブレーキを引き、車止めを置き、
転車台のロックをはずしてトロッコごとぐるっと半回転。おもしろい。
そして、無線で報告。「こちら4号車、帰り道出発します。ドーゾ」「帰りも気を付けて、ドーゾ」
再度エンジン始動、車止めをはずしてパーキングブレーキ解除。
さあ、出発地点に向けてGO!

折り返し地点で こ、怖くなんか、な、ないやい! はあ〜、まだ続くの〜?
折り返し地点で。
指名手配犯ではありません。
後ろの黄色いところが転車台。
こ、怖くなんか、な、ないやい! はあ〜、まだ続くの〜?


単線なので、今走って来た線路を戻るのだが、帰りは軽い上りになるので、景色も違う表情を見せる。
また、復路になると運転にも慣れ周りを見回す余裕もできる。
並行する道路を車が追い抜いていったり、森の中では脇を流れる小川が見え隠れして、とても気持ちがいい。
ベルクも慣れたのか、諦めたのか、おとなしく(固まってる?)前を見て乗っている。

横を車が追い抜いていく 最後の鉄橋だ。もうすぐ終点。
横を車が追い抜いていく 最後の鉄橋だ。もうすぐ終点。


森を抜け、開けた場所に出る。鉄橋を渡ればもう終点も近い。

終点が見えた! もうすぐだ。 終点に到着〜。
終点が見えた! もうすぐだ。 終点に到着〜。


あっという間の40分間。
今日のテーマの一つである、新緑の風に吹かれて生命の喜びを知る、を達成した。
ベルクはというと、トロッコを降りると途端に元気になった。やっぱり怖かったのかな。
でも、最初のジタバタはどこ吹く風と、トロッコをバックに自慢げに写真に収まる。

へへ〜んだ すぐ横にある、旧仁宇布駅のホーム
へへ〜んだ、これに乗ったんだぜ。
すごいだろう。
すぐ横にある、旧仁宇布駅のホーム


トロッコの乗車券 入国パスポート
トロッコの乗車券 入国パスポート


今日は平日ということもあってか、お客は我々だけなので、すぐに出発できた。
単線なので、複数のグループがいる時は連なって行くらしいが、タイミングによっては前の組が帰ってくるまで
40分程度待つことになる。
夏休み等の混雑期は相当待つことになるだろう。まあ、しょうがない。
廃線跡とはいえ、本物の線路の上を自分で運転できるのは全国でもここだけだということだ。
今回の旅行の中でも一番のお勧めだなあ。

13:47、トロッコ王国を出発。朱鞠内湖を目指す。


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<−41℃>
いったん美深町に戻り、国道40号から国道275号に左折、山の中へ。
朱鞠内湖自体は大きなダム湖で、それほど有名ではないのだが、昭和53年に湖の付近で日本での最低気温を記録している。
その地を訪れてみようということである。

14:46、朱鞠内湖展望台に到着。
木々の間から湖が見えて雰囲気はなかなかいいのだが、最低気温の関連の表示物が何もない。
途中、母子里の集落に何か変なピカピカでツンツンのモニュメントがあったのだが、あれかもしれない、
ということで戻ってみることに。

着いてみると、はたしてその通り。説明によると、日本で最低気温を記録したことのモニュメントだとのこと。
でも、なんかなあ。こんな訳の判らないモニュメントより、「日本最低気温の地」とかいう碑が建っていたほうがいいのになあ。

日本最低気温記録のモニュメント 今日の気温は24.4℃でした
日本最低気温記録のモニュメント。
すぐ横に百葉箱がありました。
今日の気温は24.4℃でした


旅行ガイドには、最低気温の−41.2℃を記したモニュメントの写真があったので、それを探すことにする。
ここら辺であと行ってないのは、朱鞠内湖畔のキャンプ場だけ。多分そこにあるのだろうということで行ってみる。
15:42、湖畔のキャンプ場に到着。あったあった。
母子里のピカピカでツンツンのモニュメントより若干チンケではあるが、まあいいだろう。
しかし、−41.2℃とは想像を絶する寒さだ。
シベリア原産のサモエドといえども、ちょっと耐えられないんじゃなかろうか。
ましてやベルクは誰かに似て軟弱者なので、きっとストーブの前で丸まったまま動かないだろう。

朱鞠内湖 −41.2℃のモニュメント
朱鞠内湖 −41.2℃のモニュメント
ちょっとチンケだ


。。。。ぶるる! 静かな湖で水遊び
。。。。ぶるる! 静かな湖で水遊び


朱鞠内湖のパノラマ画像はこちら(194KB)

湖畔で少し遊んで、16:04、出発。

国道275号に戻り、添牛内で国道239号に左折。士別で国道40号に戻る。
南に進むにつれて雲行きが怪しくなってくる。和寒町に入る頃には、雨が降ってきた。
まあ、ここまで天気がもったから良しとしよう。

雨の国道40号
雨の国道40号


17:01、和寒ICから道央道に入り、一区間先の旭川北ICで降りる。
道道37号〜道道212号と行き、17:45、今夜の宿に到着。
朱鞠内湖でうろうろしたので、到着が遅くなってしまった。

ここには、ドッグランがあり、その横にバーベキューハウスがあるのだが、その名前がなぜか“サモエド”という。
特に大きな理由は無いそうだが、なんか面白いなあ。
バーベキューハウス
バーベキューハウス“サモエド”


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明日は美瑛・富良野から大雪山をぐるっと一回りする予定。

【本日の走行距離:417.1km】
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